歩行リハビリにおいて非効率な歩行動作を指導していませんか?

      2017/01/14

 

どうも、理学療法士の魚住です。

 

あなたは臨床の場面で、より楽で、省エネな歩行動作を引き出すために、どういった動作指導を行っているでしょうか?

体幹を前方へ運ぶために、地面を蹴って歩行動作を行っている。

そのようなエネルギー効率で非効率なカラダづかいを指導していませんか?

 

運動学の教科書の中に歩行周期の話があったと思います。

その中に、toe-off という局面があります。

toe-off という局面を部分的に切り取ってみると、足関節の底屈という関節運動が起こっています。

この toe-off の局面を、あなたはどのように捉えているでしょうか?

 

臨床の場面において歩行動作を観察したときに、toe-off で足関節の底屈が十分にみられない、という現象があるとします。

それを受けて、セラピストとして、相手の足関節の底屈をより強化したい、促通したい。

そのような発想を持ってしまっているとしたら、あまりにも “無知” でしかありません。

そして、動作というものを、身体というものを部分的にしか捉えることができていないと言わざるを得ないでしょう。

 

今回のブログでは、歩行動作における toe-off の話を中心に、エネルギー効率の良い歩行動作を引き出すための必要な要素についてブログを書き進めていきたいと思います。

 
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現象を部分的にしか捉えられていないという問題


歩行動作における toe-off の足関節底屈という関節運動をみたとき、それは部分的な要素で起こっているものではありません。

足関節という部分を限定して捉えるから、足関節の底屈という関節運動が起こっているのであって、あくまでも視点が部分的にフォーカスした結果でしかないのです。


分かりやすくいうと

歩行動作における toe-off の足関節底屈運動というものが、足関節単独で起こっているものではなく、膝関節や股関節など、他の関節との関連性の中で起こっている現象である ということです。

股関節と膝関節の位置関係により、足関節の底屈という運動が起こっている。

このことをまず理解しないといけません。

 

このことが理解できていないために、足関節の底屈運動を強化する、促すという目的のために、股関節や膝関節の位置関係を考えることなく、部分的に足関節底屈筋である下腿三頭筋を強化するということをやってしまっているセラピストが少なくないのです。

ナンセンスですよね。

それで、より適切な歩行動作を導くことができないのです。

 

具体的にいうと、踵上げをやらせてしまっている。

足関節という身体の末端の関節で頑張らせてしまっている。

 

抗重力活動において、足関節という身体末端部で身体全体をコントロールすることができるのでしょうか?

できないことはないにせよ、そのような “カラダづかい” という観点から考えてみたときに、果たしてエネルギー効率は良いのでしょうか?

 

モノゴトを部分的にしか捉えることができない。

ゆえに、部分的なものに特化して強化したり、促通しようとする。

 

 

私たち人間の運動というのは、身体を部分的に使ってやるものではありません。

ちょっとした些細な動きでも、目で捉えることができない、感じられないかもしれませんが、全身を使ってやっているものなのです。

ということは、部分的に強化する、鍛える、というのは、それって本当に意味があるのか?

という発想を自然に持つということになるのです。

 

このような発想を持てないがために、どうしても視点が部分的なものに偏ってしまう。

その結果、あなたが関係する患者さんや利用者さんのパフォーマンスを高めることができないのです。

 

パフォーマンスが高まることは一時的にはあるかもしれませんが、それをやらなかったら、もっと良くなっているという視点も必要です。

身体を部分的に使わせるのではなく、より効率の良い全体を協調的に使えるように導くこと。

それができれば、部分的に強化するよりも、はるかに高いパフォーマンスを発揮させることができるようになるのです。

そこを理解しなければいけません。

 

動作を指導するセラピストの視点が偏ってしまっているがために、セラピストと関係する患者さんや利用者さんの可能性や能力を閉ざしてしまっている。

セラピストの考えを押し付ける関係性ではいけないのです。

 

 

歩行動作における toe-off の足関節底屈運動


歩行動作における toe-off の足関節底屈という関節運動は、足関節が主体となって行なわれている運動ではありません。

足関節主導で、行なわれる運動ではない。

つまり、股関節と膝関節が伸展した結果、“引き起こされた” 現象 なのです。

このことを理解する必要があります。

 

このことを理解しているセラピストは、足関節底屈という運動に着目して、その関節運動に特化した運動を行うことはないでしょう。

先ほども書いたように、『踵上げ』という運動を行うことで足関節底屈運動を行う筋肉である下腿三頭筋の筋力を高める、という発想にはならないということです。

上記したように、足関節底屈という関節運動は、股関節と膝関節伸展という関節運動の結果引き起こされる現象なのです。

 

では、どのような構造で足関節底屈運動が起こるのか?

そこをお伝えしたいと思います。

 

 

二関節筋による “tendon action”

 

『 tendon action 』という言葉をご存知でしょうか?

初めて聞く言葉かもしれませんね。
この『 tendon action 』とは何か?

これは “機能” のことです。

 

足関節底屈という関節運動が起こるのは、この機能によるものなのです。

 

以下の図を参照下さい⬇︎

 

 

膝関節を伸展させたとき、膝関節と足関節をまたぐ腓腹筋の長さを変えないでいると、腓腹筋自体は仕事を行なっていないにも関わらず、足関節が伸展(底屈)する のです。

この現象は、膝関節伸展力が腓腹筋によって足関節に伝達された結果、起こると考えることができますよね。

この『 tendon action 』により、体幹に近い筋で発揮された大きな力を末端の関節に伝達することができるのです。

 

“カラダづかい” というものをエネルギー効率の観点から捉えたときに、身体の末端部で頑張って体幹部を制御するよりも、身体の中枢部で生じた力を身体末端へと伝達するというカラダづかいの方が、明らかにエネルギー効率の良いものであるということは理解できると思います。

足関節の底屈という関節運動で体幹部を前方に運ぶのではなく、体幹部で生じたエネルギーを身体末端部に伝えた結果、toe-off のタイミングで足趾が地面を離れる直前に筋収縮が起こるのです。

 

 

このことを理解するために、分かりやすい話をしましょう。

トップアスリートの下腿部って、どうなっていますか?

筋肉モリモリの、太い下腿をしているでしょうか?

 

もし、体幹部を足関節の底屈という運動で制御しているなら、筋力を要するがゆえに筋肉も大きく、太くなっているでしょう。

しかしながら、トップアスリートになればなるほど、下腿はスッキリしています。

大きい、太い、とは真逆の “ほっそり” とした下腿をしています。

 

それは、身体末端部である足関節の底背屈運動で身体を制御しているのではない、ということになります。

逆なんですね。

体幹部で生じたエネルギーを身体末端部に伝える、というカラダづかいをしているということなのです。

 

トップアスリートになればなるほど、枯れ木のような下腿をしている。

末端部に行くほど細くなっている。

それはなぜなのか?

 

中枢から末端にかけて力を伝達するカラダづかいなのか、末端から中枢をコントロールしようというカラダづかいなのか。

そのことを考えることができれば、理解できると思います。

 

『 tendon action 』については、以下の書籍を参照下さい⬇︎

脳百話―動きの仕組みを解き明かす icon-book 

 

 

重要なのは、股関節伸展を生み出すこと

 

歩行動作における toe-off の局面で、足関節底屈が不十分である。

その現象、問題に対して、足関節の底屈筋である下腿三頭筋の筋力を強化する。

それは、あまりにも “無知” でしかありません。

 

関節運動を、関節単体でしか捉えることができない。

知識としても情報不足ですし、視点が偏ってしまっているとしか言いようがありません。

 

単関節だけの運動ってあるのでしょうか?

必ず、メインで使っている関節と隣接している関節も使っていますよね?

他との関連性というものを考えなければいけません。

そういう視点を持てないといけません。

 

身体運動というのは、“つながり” のある全身運動 です。

部分ではなく、全体として身体運動を捉えること。

『部分と全体』を捉える能力を高めることが欠かせない のです。

 

歩行動作における toe-off の足関節底屈運動が不十分である。

この現象における本質的な問題というのは、一体どこに問題があるのでしょうか?

それを考えることが重要なのです。

 

 

大きな問題としてあるのは、股関節の伸展が起こっていない 

 

歩行というのは前方へ重心を移動させる運動です。

人体の中で最大の関節である、股関節の関節運動が不十分である。

そのような問題があると、前方への運動が十分に引き起こされない、ということが理解できると思います。

 

股関節と足関節とを比べてみたときに、体幹部を前方へと移動する際に股関節の伸展と足関節の伸展とを比べてみると、どちらの方が前方への移動力を生み出せるのでしょうか?

考えるまでもなく、股関節ですよね?

 

関節の可動範囲が大きいという理由に加えて、関節運動に参加する筋肉の大きさも、股関節伸展の方が大きいからです。

解剖学や運動学で、関節の構造と、筋肉についての知識があれば、簡単に理解できるでしょう。

 

 

『 tendon action 』の説明のところで、膝関節の伸展の結果、二関節筋である腓腹筋の緊張により足関節の伸展が起こる、ということをお伝えしました。

膝関節の伸展というと、大腿四頭筋を思い浮かべるかもしれませんが、この筋肉が働いてしまうと体幹部を前方に運ぶという運動をみたときに、前方でストップをかけるブレーキ成分を生み出してしまう筋肉 なのです。

 

じゃあ、どの筋肉かというと

ハムストリングスです。

 

ハムストリングスも二関節筋ですよね?

そして、腓腹筋も二関節筋です。

さらに、ハムストリングスと腓腹筋はお互いに筋肉同士での “筋連結” がある。

 

歩行動作における『 tendon action 』というのは、足関節の底屈が膝関節の伸展の結果により起こるのではなく、股関節伸展筋であるハムストリングスが収縮した結果、膝関節の伸展が起こります。

膝関節と股関節の伸展の結果、足関節底屈という『 tendon action 』が引き起こされるということなのです。

体幹部で生み出した力を股関節、膝関節と伝達した結果、足関節に力が伝わる、ということなのです。

 

身体を部分ではなく、全体として捉えた結果、『歩行動作における toe-off の足関節底屈運動』を改善しようと思ったら、股関節の伸展を促す必要があるということになります。

 

 

体幹部の安定性

 

『歩行動作における toe-off の足関節底屈運動』が不十分である、という問題を解決しようと思ったら、股関節の伸展を促す必要がある、ということをお伝えしました。

股関節の伸展を促すためには、そのために欠かせない要素というものがあります。

 

それは 体幹部の安定性 です。

抗重力位での平衡機能 です。

 

体幹の機能がしっかりと確保されていないことには、股関節の伸展が起こり得ないのです。

これは想像してみると分かることです。


立位の状態から、股関節伸展により体幹が前方へと運ばれるわけですが、もし体幹の安定性が低下している状態だと股関節伸展を発揮することも難しいですし、支持基底面内から体幹を外すというのは転倒に直結する危機的状況を自ら作り出すことになるのです。

股関節の伸展が起こることで、足の位置に対して体幹が前方に位置するということになるわけですから。

 

それは、恐怖ですよね?

体幹の下に支えるものがない状態を生み出すことになるのですから。

支持基底面内から重心線がはみ出ることで、支えとなるものを失う。

そこに恐怖が生まれるのです。

 

だから、多くの人は体幹を支持基底面内に残した状態(重心線を支持基底面内に収めたまま)で、片脚を新たな支持基底面となる前方へと運ぶのです。

その結果どうなっているのかというと、支持脚となっている股関節と膝関節は屈曲し、体幹が後傾した状態で反対側下肢を前方に運んでいる。

それでは股関節の伸展が起こるわけがないですよね。

 

股関節の伸展によって体幹が前方に運ばれる。

そのようなカラダづかいとはならないのです。


常に足で突っ張ってブレーキをかけながら、歩行をしている。

エネルギー効率が非常に悪い身体運動を行っているということなのです。

 

こういったことを理解していないから、『脚を前に出しましょう』とか言ってしまうのです。

 

 

下肢が前方に振り出される際に、反対側の下肢は股関節の伸展が起こる必要があるのです。

股関節の伸展により体幹が前方へと運ばれて、その体幹に引きずられるように下肢が引き出される。

これは 自然な反射動作になっている はずです。

このようなカラダづかいとなっているのかどうか。

そこを考えなければいけません。

 

エネルギー効率の側面からみても、楽に省エネで身体運動を行えているか?

ブレーキをかけ続けている運動となっていないか?

そこを考える必要があるのです。

 

ブレーキをかけたままアクセルをいくら踏んでも、恐怖心がある限りブレーキは解除できないですよね。

エネルギーの無駄遣いをしてしまっていることに気づくべきです。

 

 

重要なことは、その運動で生じてしまっているブレーキ成分をいかに外すことができるのか?

ブレーキ成分となっているものは何なのか?

なぜ、ブレーキをかけてしまっているのか?

そういったことを捉えられないといけません。

 

でないと、エネルギー効率の悪い身体運動しか導けないのです。

 

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歩行動作におけるアクセル筋とブレーキ筋

 

歩行におけるアクセル筋とブレーキ筋とは、何筋でしょうか?

 

アクセル筋は、ハムストリングス

ブレーキ筋は、大腿直筋 です。

 

なのに、ブレーキ筋となる大腿直筋をレッグエクステンションなどで鍛えてしまっているセラピストが少なくない。

大腿直筋の筋力強化をしたり、大腿直筋の活動性が高まってしまう関節のアライメントをとらせてしまっている。

 

関節の位置関係、屈曲角度によって、使われる筋肉が変わってきます。

ちょっとした位置関係の変化で、ブレーキ成分を増強させたり、ブレーキ成分を減らすこともできるようになる。

そのことを身体で理解していないから、相手の身体をみたときに分からないのです。

 

だから、アクセル成分を高めることができずに、ブレーキ成分ばかりを高めてしまっている。

“無知” がゆえに、そのような状態に陥ってしまっているのです。

 

身体で理解しないことには、有益な情報として使えないのです。

頭だけの理解、知識だけの理解では使えないのです。

自分でまずできなければいけません。

そこを理解する必要があります。

 

 

ブレーキをかけてしまうことの問題は、上記した通りです。

体幹が前方に運ばれる際に、支持側下肢に対して体幹が後傾してしまっている。

その状態で下肢の筋緊張がどういった状態になるのか?

そこを考えてみましょう。

 

股関節の伸展が出ない歩行を行っている人の歩行動作というのは、大腿直筋の緊張が高くなってしまっている。

大腿直筋の緊張が高くなってしまうことの原因は、いくつかありますが

大きな問題としては体幹と前方に振り出した下肢との位置関係の問題があります。

 

体幹に対して下肢が前に位置している。

体幹が後傾位の状態で、下肢を前方に振り出し、足底面(踵)を接地させている。

この状態から体幹が、前方に振り出した下肢を支持脚として体重移動を行っていくことになります。

 

このときに、膝関節が屈曲しないように伸展する必要があります。

体幹を支えなければいけないのですから、膝関節が屈曲しないように伸展する必要があるのです。

この膝関節の伸展に大腿直筋の遠心性の筋収縮が使われるのです。

膝関節の伸展に大腿直筋が主導筋として使われる。

 

その結果どうなるのかというと、前方へと体重移動を行うとしている体幹を、逆に体幹を後方へと押し戻そうとする力を生み出してしまうのです。

前方への体重移動を阻害する力生み出してしまう ことになる。

 

その結果、体幹が後方へ押し戻されないように、足趾や母趾球に力を入れて足関節の底屈を起こそうとする。

そのことにより、後方へ押し戻される力を乗り越えて前方へと移動するといった、“峠越え” をするような運動を生じさせながら、体幹を前方へと運ぼうとするのです。

 

“峠越え” をさせてしまっているということは、歩行動作における前方への(水平方向)移動成分が少なくなり、垂直方向のベクトルが多いということです。

歩行動作は、水平方向、前方への移動運動 です。

 

 

エネルギー効率の観点からみても、水平方向の成分をいかに増やすことができるのか?

そこが、楽に省エネで動作を遂行できるための条件であるのに、垂直方向のベクトルを増やしてしまっているがために、非効率な運動を起こしてしまっているのです。

このようなカラダづかいをしている人は、踵を使えていません。

足底接地してもすぐに踵が地面から離れてしまう。

 

その結果、足趾や母趾球に力が入ってしまうのです。

足趾や母趾球に力が入ってしまうことは、非常に大きな問題となります。

 

ここに力を入れてしまうと、連動して下腿三頭筋、大腿直筋、腰背筋と、歩行動作における前方への移動に対してブレーキをかける働きをしてしまう筋肉ばかりを緊張させてしまうことになるのです。

このことに “無知” なセラピストは、立位の状態で足趾や母趾球に力が入ってしまうようなことをさせてしまっているのです。

 

 

よりブレーキ成分を生み出させるようなことしかしていない。

踵上げなんて、もってのほかです。

 

股関節の伸展を出そうと思ったら、踵が地面に対していかに長く接地し続けることができるのか。

踵が使えるのかどうか、ということで股関節の伸展能力が変わってくるのです。

 

踵が地面に長く接地し続けることができる。

そして、踵で地面をしっかりと押すことができる。

この能力が、股関節の伸展に大きく関わってくるのです。

 

 

足底面が地面に接地させたCKC (オープン・キネティック・チェーン)の状態で、股関節伸展運動において高い筋力を発揮しようと思ったら、踵がしっかりと地面に接地している状態をつくり出す必要があります。

これはあなた自身の身体で体験してもらうと簡単に理解できることです。

 

仰向けでも、側臥位の状態でも良いので、どちらか一方の足底面を壁につけてみて、その状態で踵をきちんと接地させた状態で踵を壁の方向に押してみるのと

踵を少し浮かした状態で、前足部や母趾球に意識を置いて、壁を押し出してみたときに、どちらが股関節の伸展力を発揮させやすいのか?

どちらが、体幹の安定性が高いのか?

それを自分の身体を通して理解できると思います。

 

さらに、足底面と股関節や体幹との位置関係も少しずつズラしてやってみると、どの位置関係がもっとも体幹部の安定性が得られて、股関節の伸展が発揮しやすいのか、ということが理解できると思います。

 

足部が身体の前側にあると大腿直筋が働きやすいでしょう。

仰臥位では難しいですが、体幹の長軸方向に対して、一直線になるように下肢を置いてみるとどうなるのか?

体幹の後方に位置させてやってみるとどうなるのか?

色々と実験してみることが重要なのです。

 

 

身体で理解する。

身体で体験することで腑に落とすことが重要なのです。

股関節の伸展力を高めたいのであれば、踵をいかに使えるのか。

これが重要な要素なのです。

 

踵が地面から浮いてしまっている状態では股関節の伸展が起こせない のです。

 

 

ブレーキ成分を減らすという観点から、踵が使えて股関節の伸展力が発揮できるようになってくると、先ほども書いたように足趾屈筋や下腿三頭筋、大腿直筋、腰背筋といったブレーキ成分となる筋肉の緊張から解放されるようになります。

ブレーキ成分が減れば、前方への体重移動がスムーズに行われるようになる。


そして、ブレーキ成分が減ることで、アクセル成分を有効に使うことができるようになる。

そういった状態こそ、楽に省エネで動作が遂行できる状態ではないでしょうか?

 

多くのセラピストが、いかに “頑張らせて” 様々な動作練習をやらせてしまっているのか。

そこに、まずは気づく必要があると思います。

 

その動作を獲得するために

その動作を遂行するために

本当に、“頑張らせる” 必要ってあるのでしょうか?

頑張らないとできないものなのでしょうか?

 

そこをもっと考えてみる必要があると思います。

 

 

いかにバランスを崩せるのか


歩行動作というのは、絶えずバランスを崩すことの連続により、慣性の法則を活かして前方への体重移動を行っていく動作です。

 

バランスを崩す

このことができずに、いつまでも次の局面に移行することができずに、その空間に “居着いている” 状態に陥ってしまっている人が少なくありません。

 

“居着く” ということは、ブレーキをかけてしまっているということです。

動作が止まってしまっている。

流動的に身体が動いていないということなのです。

それはエネルギー効率の側面からみても、非効率なカラダづかいでしかないのです。

 

バランスを崩すことができない。

それは、身体のあちこちに緊張があるということです。

 

支持基底面内から、重心線がはみ出さないように、まずは自分自身の安定性と安全性を確保した上で、次の新たな局面に移行していく。

次の新たな局面に移行していく際に、身体の緊張を解放できないがゆえにブレーキをかけ続けたまま、前方への体重移動を行っていくのです。

 

 

具体的にいうと、立位の状態の支持基底面があり、その空間での安定性と安全性を確保したまま、片脚だけをその空間に残したまま、反対側の下肢を前方へと振り出します。

そして、振り出した下肢の足底面が接地すると、足裏で地面を感じながら、転倒しないように徐々に体重をかけていく。

そうやって、安定性と安全性を確保しながら、体重移動を行っていくのです。

 

このような動作は、二動作となっているがゆえに、非常にエネルギー効率が悪い 


二動作というのは、支持脚で体幹を支えた状態で、体幹の前方移動にブレーキをかけながら、まずは支持脚とは反対側の下肢を振り出す。

振り出した下肢の足底面が接地してから、ようやく支持脚にかかっている体重を抜きながら、前脚に体重を乗せていく。

このような動作となっているのです。

 

 

こういった動作ではなく、エネルギー効率の良い歩行動作を獲得しようと思ったら、体幹の前方移動に伴って下肢が引き出される、または、体幹に引きつけられるようについてくる。

体幹の前方移動(前方への体重移動)と下肢の引き出しがセットで起こる動作。

このようなカラダづかいができるように指導することが重要になってきます。

 

そのためには股関節の伸展が必要ですよね?

体幹の前方への移動よりも先に下肢を前に振り出すのではなく、支持脚の股関節の伸展に伴って体幹が前方に運ばれる。

股関節の伸展によりハムストリングスが引き伸ばされ、伸張反射が起こり、股関節の屈曲が起こるのです。

 

 

歩行動作における下肢の前方への振り出しを行う筋肉として、大腿直筋が重要であると勘違いして、鍛えているセラピストがいますが、そんなことをしても何も意味がないのです。

主導筋は腸腰筋 なのです。

腸腰筋を使って、下肢を前方に引き出す、体幹に引きつけるのです。

 

この腸腰筋を鍛えるために、このような方法を行っているセラピストがいます。

座位の状態で、膝に手をおいて徒手抵抗をかけて股関節の屈曲運動を行ってもらう。

それで、腸腰筋を鍛えているというセラピストもいますが、適切に腸腰筋に対して刺激を与えられているのかというと疑問です。

 

腸腰筋に対して適切な刺激を与えることができているとは思えない。

座位の状態(股関節、膝関節屈曲位)で、腸腰筋を歩行動作おける適切な筋活動を再現できるのでしょうか?

腸腰筋は半分 “ゆるんだ” 状態ではないでしょうか?

腸腰筋の筋収縮の様式が異なりますよね?

 

 

歩行動作で、どのように腸腰筋が使われるのかというと、ハムストリングスと拮抗関係にある大腰筋が、股関節の伸展(ハムストリングスが主導となり行われる関節運動)により引き伸ばされて、股関節の伸展から股関節の屈曲に切り替わるタイミングで伸張反射が起こるのです。

この伸張反射を初動として、腸腰筋が収縮して股関節の屈曲が起こるのです。

その結果、体幹に下肢が引きつけられる、前方に下肢が自動的に引き出されることになるのです。

 

座位の状態では、このような腸腰筋の筋活動は行われないし、再現できないですよね?

それはつまり、無意味だということ です。

 

実際に使われる筋肉の収縮様式を再現できるなら、それは効果的なトレーニングにはなるでしょう。

しかしながら、そのようなことができていない。

だから、相手の歩行動作を適切な動作へと導くことができないのです。

 

※ 腸腰筋やハムストリングスの機能については、こちらのブログで詳しく書いています⬇︎

あなたが『軸』を学ぶなら、迷わずこの一冊を読もう! icon-external-link 

 

 

まとめ

歩行リハビリにおいて、エネルギー効率の良い歩行動作を指導するということ。

それは、重力場という環境において、カラダの構造というものを重力と調和した状態で使う、ということです。 

 

歩行動作というのは、“頑張って” やるものではない。

歩き始めには力を要しますが、それ以降はなるべく慣性の法則を活かして、省エネで動作が行えるような “カラダづかい” ができることが、エネルギー効率の観点から重要な要素となってきます。

そのためには、垂直方向へのベクトルを減らし、水平方向のベクトルを増やすこと。


それが、歩行動作におけるブレーキ成分を減らすことになるのです。

ブレーキ成分を減らすことが、楽に省エネで歩行動作ができる、ということに “つながる” のですから。

 

水平方向へのベクトルを生み出すために必要な要素については、ブログでお伝えしてきました。

股関節の伸展を引き出すこと、でした。

 

そして、股関節の伸展を引き出すために必要な要素についてもお伝えしてきました。

ブログでお伝えしてきたことは、知識としての理解ではなく、あなた自身のカラダを通しての理解が重要です。

そうでないと、実際には使えない知識となってしまいます。

 

 

より適切な動作を指導する。

それができているセラピストは少ないと思います。

 

それは教科書的な知識や情報だけでしか指導できていない、という現実があるからです。

より適切な動作を導こうと思ったら、そのための知識や情報はネットで調べれば簡単に手に入れられる時代です。

しかしながら、あなた自身が手に入れた知識や情報を、目の前の相手にそのまま提示しても、それが適切なのかどうかは疑問です。

 

あなたの関係する相手にとって適切な情報を提示できていなければ、適切な反応を引き出すことができないのです。

 

『刺激と反応』という観点から、ある目的があって、その目的を達成するために、どのような刺激を、どのように与えれば良いのか?

適切な反応を引き出そうと思ったら、きちんと刺激に対する相手の反応を観察しなければいけません。

適切な反応が得られていないのであれば、あなたの与えた刺激は適切な刺激ではない、ということです。

 

教科書的な知識や情報で、目の前の相手の可能性や能力を引き出すことはできません。

相手にとって適切な刺激を与える。

 

そこには、感性と対話力が欠かせません。

 

相手を無視した一方通行な関係性ではいけないのです。

双方向に循環が起こるような関係性を構築することが重要なのです。

絶えず、対話し続けながら、より適切な反応を引き出していくことができる。

そのようなセラピストが一人でも増えれば、この業界により良い循環を生み出すことができるようになると思います。

 

 

適切な反応を引き出せない、結果を出せない。

それは、あなたの提供している刺激が適切ではない のです。

 

適切な刺激には、万人に共通する “答え” なんてものはない のです。

しかしながら、多くのセラピストは〇〇をやれば、〇〇を得られるといったような具体的な答えを求めるのです。

だから、結果を出せないのです。

相手の可能性や能力を引き出すことができないのです。

 

知識や情報だけをいくらインプットしても、それはあなた自身の成長や進化にはつながらないのです。

 

 

ネットワーク化していない情報は、何も有益な情報とはならない。

いかにインプットした知識や情報をネットワーク化できるのか?

そこには、本質を理解した上で、実際に臨床の場面であなた自身が多くの経験を積み重ねる、ということが重要になってくるのです。

 

本質力を高めること。

それなくしては、存在価値のない、取り替えのきくセラピストでしかありません。

あなたは、どのようなセラピストになりたいですか?

 

ということで、今回のブログは以上になります。

最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。

 

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